仕方なんてあるものですか」
「いや、それは僕たちが発見した時の死人の様子なんだよ」
「しかしそれならどこから這入って来たんでしょう?」
「前の入口からさ」
「でも今朝は、そこにはちゃんと閂がかかっていましたよ」
「そりア仕事がすんでからかけたからさ」
「だが、あなたはどうしてそれをご存じなんです?[#「ご存じなんです?」は底本では「ご存じないんです?」]」
「その跡がちゃんとあるよ。――ちょっと待ちたまえ、今、君にもっと不思議なことを見せて上げるから」
 彼は入口のドアまで歩いていった。そしてそこの鍵を、彼独得の法則にかなったやり方で調べた。それから内側にある鍵もとって、しらべてみた。また寝台も敷ものも椅子も暖炉も死体も綱も、順々にみんなしらべてみた。彼の満足が行くまで。――そうして私と探偵との手を借りて、その死骸を下におろして、うやうやしく被いものでおおった。
「この綱はどこから持って来たものなんです」
 彼はきいた。
「これから切ったんですよ」
 トレベリアン博士は寝台の下から、大きな綱の束を引っぱり出しながら、答えた。
「ブレシントンは無暗《むやみ》に火事をこわがったんです。だも
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