シャーロック・ホームズの予言は、たちまち見事にあたってしまった。しかも最も劇的な筋みちを辿って。――と、云うのは、その翌朝の七時半頃のことだった。窓からさし込む朝のうす明かりの中に、もう不断服《ふだんふく》に着かえたホームズが、私の寝台の側に立っているのを見出した。
「ワトソン、馬車が迎えにやって来てるんだ」
と、彼は云った。
「何か起きたのかい」
「いいや、例のブルックストリートの事件だよ」
「ああ、――じゃ、何か新しい知らせでもあったんだね」
「悲劇的な、しかも至ってまぎらわしい知らせなんだ」
彼は部屋の窓の鎧戸を引きあけながらそう云った。
「まあ、これを読んでみたまえ、――ノートから破りとった紙の上へ、鉛筆で、――直ちに御来駕御救援願いたし、トレベリアン、――と書いてあるんだからね。たぶん医者は、このノートさえ書くのにやっとだったに違いないんだよ。――とにかくよほど困ってるらしいんだから、いってみてやろうじゃないか」
それから二三十分の後、私たちは例の医院の前に着くことが出来た。と、彼は恐怖に満ちた顔つきをしながら家の中からとび出して来た。
「思いがけないことになったんです
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