彼はそう云いながら、自分の手で自分の額を押えた。
「一体、どうしたと云うんです?」
「ブレシントンが、自殺をしちまったんですよ」
 ホームズは驚きの声をあげた。
「そうなんです。昨夜《ゆうべ》のうちに、ブレシントンは首をくくっちまったんです」
 私たちは家の中に這入っていった。そして医者は、私たちをたぶん待合室であろうと思われる部屋に案内していった。
「実際、私はどうしたらいいのか、全く分からないんです」
 トレベリアンは云った。
「巡査はもうとうに来て二階にいます。私はただもうふるえているばかりです」
「あなたが自殺を見つけたのはいつ頃ですか?」
「彼は毎朝早く、きまってお茶を一杯飲むのが習慣だったんですが、今朝も七時に女中がお茶を持って部屋に這入って行くと、その時には既に、彼は部屋の真ん中にブラさがっていたのだと云うことです。――いつもあの重いランプをかけることにしていた鈞《はり》に、紐をむすびつけて、昨日私たちに見せたあの箱の上から飛んでぶらさがったものらしいですね」
 ホームズはしばらくの間じっと考えて立っていた。
「ねえどうでしょう」
 ホームズはやがて云った。
「僕も
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