ど、それはたしかにそうかもしれないね」
と、私は云った。
「だがその他に、こうも考えられる。その顛癇病のロシア人親子の話は、みんなトレベリアン博士のつくり話で、ブレシントンに対して何かなす所あろうため、そんな話をつくったのではないかと云う事だね」
私は、ホームズが私のこの反対を耳にした時、ニヤリと得意げに微笑したのをガスの光りの中に見た。
「僕もそれは最初に考えたよ」
彼は云った。
「しかし僕は、医者の話は本当のことだと云うことを確かめることが出来た。――と云うのは例の若い男は、階段のカーペットの上へも、ちゃんと足跡を残していっていたので、部屋の内へ残していったと云うその足跡を見に行かなくても僕はちゃんと分かってしまったんだが、ブレシントンの靴もあの医者の靴もさきが尖っているのに、その足跡は四角な爪さきで、そして医者の靴よりは一|吋《インチ》三分の一は大きいのだ。これを見れば、彼の話がつくり話ではなさそうに思われたんだ。――が、まあ、今夜は早く寝て、寝ながら少し考えてみようよ。きっと明日の朝になるとブルックストリートから何か云って使《つかい》が迎えにやって来るから………」
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