外出中のことだったのは、偶然にそうなったのだと云うことだ。それは、つまり診察してもらうのに、殊更に夕方のそんな変な時間を選んだと云うのは、そんな時間なら待合室には誰もいないのに相違ないからだったのだ。ところが、それが偶然にもブレシントンの毎日の規則と合ってしまったわけなんだ。その二人の男は全くブレシントンが毎日夕方になると散歩に出ることなどは知らなかったのだ。――無論、もしその二人の男が、何か略奪をする目的でやって来たのだとしたら、あのブレシントンの部屋に少くもその辺を探し廻ったらしい形跡がなくてはならない。その上、僕は、大ていの場合、人の目を見れば、その男が何か心に恐怖を持ってる場合には、ちゃんと見抜くことが出来るんだ。――そこで僕はこう見当をつけた。その二人の男は、ブレシントンを讐《かたき》とねらってる男に相違ない、とね。――とすれば、その二人の男が何者だか、ブレシントンは知っていなければならないはずだし、それだからこそ彼はそれを隠して知らないような顔をしているのに違いないのだ。だが、見たまえ、あしたになると、あの男はきっと正直に何もかも打ちあけて話すようになるから……」
「なるほ
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