たってる奴があなたの代りに働いていると云うことを、あなたに話すような男と寄りさわらないようにすることも。そこであいつ等は、あなたに給料の前払いをして、バーミングへ追っ払ったんです。そうしてあなたがロンドンへ行かないように、そこであなたに仕事をやらせたわけです。けれどあなたは彼等のたくらみ[#「たくらみ」に傍点]を見破ることが出来たんです。――からくり[#「からくり」に傍点]の全部はこうなんですよ」
「けれどなんだってこの男は、兄弟に化けたりなんかする必要があったんでしょう?」
「なるほど、それは分かりきってますよ。この事件には、判然と、人間は二人いるきりです。一方では、モーソンの事務所で、あなたの代りになっています。それからこっちのほうでは、あなたの雇主として活躍したわけです。ところが、あなたを雇うのに、誰か第三者を彼のこの計画の中に入れて、その人にあなたを推薦させないでは工合が悪るかったのです。けれど第三者を中に入れることは、いやだったんですよ。そこで彼は出来るだけ自分の容貌をかえたんですね、そしてそれでもまだ似ている所は、あなたも見破れなかったように、兄弟だから似ているのだと云うよ
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