して窓から外を一心に眺め初めた。そうして私たちはそのまま、私たちが新開通りへつくまで一言も彼から言葉を引き出すことは出来なかった。
× × × × ×
その日の夕方七時、私たち三人は歩いて、コーポレーション通りを会社の事務所のあるほうへ下っていった。
「時間が来るまでは私たちは用なしのからだですよ」
と私たちの依頼人は云った。
「明《あきら》かに、彼は私に合うだけにあそこへ来るんです。なぜって、時間が来るまでは、事務所はガラ空きになってるって、彼が言明してますもの」
「何か曰くがありそうだな」
ホームズは云った。
「確かにそうなんですよ。――ほら、あそこへやって来ました。」
と、その事務員は叫んだ。
彼は道路の反対側をいそぎ足で歩いている、小柄なブロンドのきちんとした服装をしている男を指さした。私たちが彼に注意している時、彼は馬車やバスの間から飛び出して来た。夕刊を売りながら怒鳴っている少年を呼びとめて、一枚買いとった。そしてそれを手に掴《にぎ》りながら入口から中へ消えてしまった。
「あそこへいった」
ホール・ピイクロフトは叫んだ
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