のです。無論あなたは兄弟は似ているとおっしゃるでしょう。しかし同じ歯を同じようなやり方でうめるわけがないではありませんか。――彼は私を送り出しました。そして私は通りへ出ましたが、無我夢中で、足で歩いてるのか頭で歩いてるのか分かりませんでした。私はホテルへ帰りつくと、冷たい水で頭をひやして、そのことを考えてみました。――なぜ彼はロンドンからバーミングハムへ私を寄越したんだろう……またなぜ彼は私に近寄って来たのだろう。そして何の必要があって彼は、自分自身から自分自身へあてた手紙などを私に持たせてよこしたのだろう? ――これらのことは私にはあまりに問題が多すぎて、判断が出来ないのです。その時ふと私は、私には何が何だか分からないことも、シャーロック・ホームズさんには分かるだろうと云う事に考えついたんです。で、私はすぐさま夜中《やちゅう》に乗り込んで、今朝お目にかかって、そのままバーミングハムへ私と一しょに来ていただこうと思ってやって来たわけなのでございます」
株式仲買店事務員は彼の不思議な経験を話し終ってから、ちょっとだまった。と、シャーロック・ホームズは、ちょうどお酒の鑑賞家が、素晴らしい
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