た。それから私は振り返った途端に犯人がテーブルの上に投げて行った、紙片を丸めたものを見つけた。それはホームズが彼をおびき寄せた手紙であった。
「さあ、君、これを読めるかね? ワトソン君、――」
ホームズは笑いながら云った。
それは一語もなく、ただ次のような舞踏人の短い一行であった。
[#図8入る]
「いや、僕が使った、暗号表を用いれば、これはもうごく簡単なものだとわかるよ」
ホームズは云った。
「これは、"COME HERE AT ONCE"(すぐに来い)と云うだけのことだよ、いくら何でもこの招待状では、彼は万障を繰合せても来ると思ったのさ。何しろこうしたものを書ける者は、夫人以外には無いのだと彼は信じているのだからね。さてこうして、親愛なワトソン君、我々もこの悪業の手先に使われていた舞踏人を、今度は善い意味のものに転化してしまったし、また僕も君の覚書の中に、一つはなはだ特異な件をお土産にしようと云う約束も、これでともかく果したわけだ。三時四十分の汽車があるが、我々はベーカー街に行って、夕食でも食べるとしようか、――」
簡単に結末だけを。
この亜米利加《アメリカ》人のアベー・ス
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