通牒を彼の女の目の止まるところに置いたのでした。
そしてとにかく私がここに来てから一ヶ月になります。あの農場に住んで、地下の一室を持って、夜間は毎夜のように、自由に出入が出来ました。しかし誰もそのことは知りませんでした。私はあらゆる手段をつくして、エルシーを誘い出そうとしました。彼の女はたしかに、通牒は読んだに相違なく、遂に一度だけは返事をくれました。それに私は少し気をよくして、彼の女の脅迫を始めたのです。それから彼の女は一本の手紙をよこして、私に立ち去ってくれるようにと、懇願して来ました。そしてもし夫の身辺に、その名誉を汚すようなことでも起ったら、もう彼の女は立っても寝てもいられないからと云うのでした。そして、もし私が素直にここを立ち去って、彼の女を安穏にのこして行ってくれるなら、夫の眠っているのを見計らって、暁《あ》け方の三時に起きて来て、私に立ち退くように説得するために、金を持って来ました。私はこれを見て、嚇《かっ》としてしまって、彼の女の腕を取って、窓から引ずり落そうとしたのです。と、――その瞬間に、彼の女の夫は、ピストルを手にして、飛び出して来ました。エルシーは床の上に跼ま
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