似も似つかず、苦心して手跡をかえたものであった。その宛名は、ノーフォーク、東ラストン・エルライジ農場、アベー・スラネー氏と云うのであった。
「検察官――」
ホームズは叫んだ。
「護衛の者を派遣してもらうよう、打電した方がいいと思いますがね。もし僕の胸算用に誤りがないとすれば、あなたはとても危険な犯人を護送しなければならないことになるかもしれないと思われますよ。いやこの書付を持ってゆく子供は、きっとあなたに電報を打たせることになりますよ。さてワトソン君、もし午後の汽車があるなら、我々はそれに乗った方がよかろう。やってしまいたい、面白い化学の分析の仕事もあったし、またこの事件の方はもう、さっさと片づいてしまいそうだから――」
その若者が出発してしまってからは、ホームズは今度は、下僕たちに指図した。もし夫人を訪ねて来た者があっても、決してその状態を知らせてはならないこと、――そしてその者を早速、応接間に通すこと――こう云うことを彼は、熱心に云い含めた。それから最後に彼は、もう仕事もなくなったから、いずれまた何か出てくるまで、ブラブラしていようじゃないかね、と云いながら、応接間の方に引き上
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