ん、女中たちは室を出るや否や、火薬の臭がしたと云った時に私はそれはとても重要なことだと云ったでしょう?」
「えい、たしかに仰有いました。しかし私は正直のところ、あまりそれに同感も感じていませんでした」
「このことはつまり、発射された時には、室のドアも窓も開いていたのだと云うことを暗示しているのです。もしそうでないとしたら、そんなに早く、火薬の臭が家中に、ただよい渡るはずはないからね。それにはどうしても一陣の隙間風を必要とする。ドアも窓も、ほんのちょっとの間開かれたのだ」
「それはどうして証明なさいますか?」
「ローソクが傾いてへっていなかったから、――」
「ああこれは敵《かな》わない!」
 検察官は叫んだ。
「ああ、大したものだ!」
「この悲劇の時は、窓は開いていたと云うことを認めてみると、この事件には第三者があって、その開いていた窓を通して、窓の外から射撃したに相違ないと云うことが考えられる。それからその者を撃った弾丸のどれかは窓縁に当ったに相違ない。私は見渡したら果して、弾痕があった!」
「しかしそうしたとしたら、窓が閉められて、しかも内側からしっかりと締めつけられたのはどう云うわ
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