―さてもう、キューピット氏の死体は、動かしてもよろしいでしょう。それから先生《ドクトル》、夫人を撃った弾丸は、見つかりましょうか?」
「何しろ非常な大手術をしなければなりませんな。しかし実弾は四発ありますから、二発で二人が撃たれ、弾丸の勘定はよく合いますがな」
「そう思いますか?」
 ホームズは云った。
「あなたはあのたしかに、窓の縁を射た弾丸も勘定に入れておられるでしょうな?」
 彼は突然振り返って、痩せた長い指で一点を指さした。なるほど、窓の下際から一|吋《インチ》ばかり上の処を、見事に貫通した穴があった。
「ああ!」
 検察官は歎声を上げた。
「どうしてあんなものに目が止まったのですか?」
「いや私は探していたのです」
「これは怖ろしい!」
 田舎医者は云った。
「いや確に仰せの通りに相違ありません。それでは、第三弾が発射されてるわけですから、第三者がいなければならないわけですな。しかしそうしたら、どんな者がここに現われて、そしてどうして遁げ出したのでしょう?」
「そのことがすなわち、これからの我々の問題ですがね」
 シャーロック・ホームズが云った。
「ね――検察官のマーティンさ
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