だ。
僕がそこへいってからまもなくある夕方のこと僕たちはお夕飯後に葡萄酒を飲みながら腰かけていた。と、その時トレヴォの息子は、僕が既に系統立ててあった、僕のこんな探偵的な観察や推理の癖について話しだしたんだ。もっとも僕はその時まだ一度も、それらを実際に応用しためしてみたことはなかったのだけれど。――ところが、老人は明かに、彼の息子が、僕のしたつまらない一つか二つの功績の話を、誇張して話しているんだとでも思ったのだね。
「じゃ、ホームズ君」
と、彼はニコニコ笑いながら云うんだ。
「私は大事件にぶつかっとるんじゃが、それがどんなことか分かるかね」
「うまく当らないかもしれませんよ」
と僕は答えた。
「この一年間のあいだ、あなたは誰かに襲われやしないかと云う恐怖をお持ちになっていたと思いますが」
と、彼の唇からは笑いが消えてなくなり、彼はひどく驚いて僕の顔をじっと見詰めたのだ。
「そうです。その通りです」
彼は答えた。
「ヴクトウ、お前は知っとるじゃろう」
と、彼の息子のほうを見ながら
「あの密猟者隊を解散させた時、あいつ等が私を殺ろすと云ったのを。――そうしてエドワード・ホビー
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