五年でも十年でも引っ張れる。その間、お前はどうして食う。裁判費用をどこから出す。ヘッヘッヘッ」と、吉武有と云う、鋳込まれたキャプスタン見たいな、あの船長奴、抜かしやがった。抜かしやがった。畜生!「どうして食う? どうして食う?」と奴はこきやがった。――
私は橋板上へ、坐り込んでしまった。
足と、頭の痛さとが、私を、私と同じ量の血にして橋板へ流したように、そこへ、べったりへたばらしてしまった。
――畜生!――
「セキメイツ! 人間の足が痛んでるんだ。分らねえか、此ぼけ茄子野郎! 人間の足が、地についてる処が疼いてるんだ。血を噴いてるんだ!」
私は、頭を抱えながら呶鳴った。
セコンドメイトは、私が頭を抱えて濡れた海苔見たいに、橋板にへばりついているのを見て、「いくらか心配になって」覗き込みに来るだろう。「どうしたんだ、オイ、しっかりしろよ。ほんとに歩けないのかい」と、私の顔を覗き込みに来るだろう。そして、私の頭に手をかけるだろう。オイ。
――手だけは、未だ俺は丈夫なんだからな。ポカッ! と、俺は、奴の鼻に行かなくちゃいけない。口ではいけない。眼ならいくらかいい。だが鼻が一等きき
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