えないような、雛っ子じゃあるめえし、未だ、おいら泣き死にはしねえよ。淋しい死に方なんざしたくねえや」
「フン。強い事あ、もっと早くか、もっと遅く言ったらどうだい。ま、足でも癒ってからな。第一、お前は船長に云う事を俺に云ったって、追つかない話だぜ」
「いいとも。船長だってお前だって、塵木葉なんだよ」
私は、立ち上った。
腰を下していた行李を担ぎ上げた。
セコンドメイトは、私が行李を担ぎ上げたので、二足許り歩いた。
私は、行李を運河の中へ、力一杯放り込んだ。
「ヘッ、俺等なあ、行李まで瘠せてやがらあ。ボシャッてやがらあ。ドブンとも云わねえや。お前だって俺だって此行李と違やしないんだぜ。セキメイツ!」
行李は、ひょうきんな格好で、水を吸って沈むまでを、浮いてごみ屑と一緒に流れた。
「どうしたんだい。一体、お前気でも狂ったんじゃないのか」
セコンドメイトは、ポシャッと云った水音で振りかえってそう云った。
「首なし死体を投り込んだんだよ。ありゃ腐った臓腑だけっか入ってねえんだ。お前だって、あの行李ん中へ入ってるんだよ。俺だって、自分の行李がいらなくなりゃ、雇止めを食わさあな、ヘッ。さ
前へ
次へ
全12ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング