奴のローラー見たいな首筋を見せたら、私の担いでいた行李で、その上に載っかっている、だらしのないマット見たいな、「どあたま」を、地面まで叩きつけてやろう! と考えていたのだ。
「で、お前はどこまでも海事局で頑張ろうと云う積りかい?」
と、セコンドメイトは、私に訊いた。
「篦棒奴。愚図愚図泣言を云うない。俺にゃ覚悟が出来てるんだ。手前の方から喧嘩を吹っかけたんじゃねえか」
私は、実は歩くのが堪えられない苦しみであった。私の左の足は、踝の処で、釘の抜けた蝶番《ちょうつがい》見たいになっていたのだ。
「お前は、そんな事を云うから治療費だって貰えないんだぞ。それに俺に食ってかかったって、仕方がないじゃないか、な、ちゃんと嘆願さえすれば、船長だって涙金位寄越さないものでもないんだ。それを、お前が無茶云うから、船長だって憤るんだ」
セコンドメイトは、栗のきんとん見たいな調子で云った。
そのきんとんには、サッカリンが多分に入っていることを、私は知っていた。その上、猫入らずまで混ぜてあったのだが、兎に角私は、滅茶苦茶に甘いものに飢えていた。
だものだから、ついうっかり、奴さんの云う事を飲み込も
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