兄弟なんだが、それに、ほんの「ポッチリ」目腐金《めくされがね》をくれてやって、お前の方の「目明し」に使うことができる。捕吏にもな、スパイにもな。
 お前は、俺達の仲間の間へ、そいつ等を※[#「虫+條」、41−13]虫が腹ん中へ入るようにして棲わせておくんだ。俺達の仲間はひどい貧乏なんだ。だから、目腐金へでも飛びつく者ができるんだ。不所存者がな。
 お前は、俺達を、一様に搾取するだけで倦《あ》き足りないで、そういう風にして、個々の俺達の仲間までも堕落させるんだ。
 フン! 捩《ねじ》れ。 押しひしゃげ。やるがいいや。捩れるときは捩れるもんだ。そうそういつまでも、機会というものがお前を待っては居ないだろうぜ。お前が、この地上のあらゆる赤ん坊を、ことごとく吸い尽してしまおうという決心は、まったく見事なもんだ。
 だが、お前はその赤ん坊を殺し尽さない前に、いいかい。誰がどうしないでも、独りでにお前の頭には白髪が殖えて来るんだ。腰が曲って来るんだ。眼が霞み始めるんだ。皺だらけの、血にまみれた手で、そこでやかましく、泣き立てている赤ん坊の首筋を掴もうとしても、その手さえ動かなくなるんだ。お前が殺し
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