労働者の居ない船
葉山嘉樹
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)暴化《しけ》てる
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|石炭運び《コロッパス》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]――一九二六、二、七――
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こう云う船だった。
北海道から、横浜へ向って航行する時は、金華山の燈台は、どうしたって右舷に見なければならない。
第三金時丸――強そうな名前だ――は、三十分前に、金華山の燈台を右に見て通った。
海は中どころだった。凪いでると云うんでもないし、暴化《しけ》てる訳でもなかった。
三十分後に第三金時丸の舵手《コーターマスター》は、左に燈台を見た。
コムパスは、南西《サウスウエスト》を指していた。ところが、そんな処に、島はない筈であった。
コーターマスターは、メーツに、「どうもおかしい」旨を告げた。
メーツは、ブリッジで、涼風に吹かれながら、ソーファーに眠っていたが、起き上って来て、
「どうしたんだ」
「左舷に燈台が見えますが」
「又、一時間損をしたな」と、メーツは答えて、コムパ
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