弟たちや従弟たちも、火をつける前に見付けて、上の方の道路へ追ひ上げてあつた。
その子供たちを、百姓家の現場とは反対側の軒下に立たせて置いて、私はそれを監視しながらベルを振つてゐた。
パーンと云ふ風な、浅い音が現場で起つた。と同時に、パラパラッと破片が飛んで来た。その時、私の立つてゐる道に、私の直ぐ後ろ横に、下流の方から一人の子供が駆けて来た。
「危いッ」
と、幼い足音に、私は叫んだ。
見ると、その児の鼻の上に、破片が当つたと見えて、血が流れてゐる。
私と並んで立つてゐた太田は、その子供が自分の従弟だと見ると、抱きかかへて、
「馬鹿が、ハッパの処へ来るんぢやないと云つてあるのに」
と云ひながら、尻を引ッぱたいた。
「とにかく医者に早く連れて行かなけや駄目だ。見ろよ、大ダイ一本も入れるから、俺が危いつて云つたぢやないか」
だが、怪我をした以上は何もかも後の祭であつた。
麗らかな珍らしい秋の一日を、それまで楽しんでゐた私も、同様な気持であつただらう太田も、一度に深い憂鬱と気づかひに捕はれて、医者のゐる上流へ急いだ。
「おぢさん、何でもないよ。俺歩いて行くよ。見つともないよ」
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