破岩が激流の河面にバラバラッと飛び込んだ。
大きい破片は抱き上げられない位のものもあり、小さいのは安全剃刀の刃位のものまでも、水面に射込んだ。
「良かつた」
と、私は、岩陰から川舟の行衛を隙間見しながら、ホッとしたことがあつた。
その日も、午前九時頃まで冴えたタガネの音がしてゐたが、それが止むと、暫くして、太田が上の方からA川に沿つて降りて来た。
手に導火線をブラ下げて、その下に大ダイが一つくつついてゐた。丁度、アケビの実を蔓ごとぶら下げたやうに見えた。
「大丈夫かい。穴はどつちを向いてるかい。さうかい、ふん、大ダイ一本ぢや詰め過ぎやしないかい、うん、大丈夫だね。頼むよ、この辺は危いからね、人通りがあるんだし、家が近いからね」
と、私は、太田がうるさがる程、念を押した。
太田がA川の合流点附近から、
「つけたぞ」
と怒鳴つた。私は、橋の袂にゐて、現場の導火線から煙が上るのを見て、ベルを振り、ハッパだ、ハッパだあ、と怒鳴りながら、上流の方へ駆け、人が来ないのを見届け、又、下流の方へ駆けた。
丁度現場の直ぐ側へ、栗や胡桃を拾ひに行つて、藪影でゴソゴソやつてゐた、太田の幼い
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