体、護送されているのなら、捕縄をかけられていなけりゃならないんだのに。奴等は手ぶらでいやがった。解らねえ。俺には分らねえよ。「突破しろっ!」と、あの小僧奴怒鳴りやがった。何だって突破しろなんて云うんだ。「遁げろ」って何故云わねえんだ。何が何だかさっぱり訳が分らねえ。何分、いい度胸だよ。蹴飛ばしやがったな。ポコッと頭が鳴っただろうな。気持ちは悪くねえさ。いい気味だよ。ところで俺は、ええっと、どうしたらいいかな。この附近で一仕事為た方がよかないかな。何しろ、あんなにあそこに集ってる処を見りゃあ、外の処が手薄になってるに決ってる。それに、決ってる。それに近くでやりゃあ、あいつ等が目星をつけられらあな。そうだ。何でも構わねえ。此次に止った処で降りてやる。だがあいつ等たあ一体何だ? 途方もねえ大仕掛な野郎たちだ。二十人も一塊りになって、乗り込んで行きやがる。全で滅茶苦茶だよ。捕るのを覚悟で行きやがるんだもんな。俺はそんなへまはやらねえよ。一人でなきゃ駄目さ。それにしても、奴等は俺とは仕事が違うらしいや。でなけゃ、一人が一人ずつ連れて歩いて仕事が出来る訳はないからな)
汽車は沿岸に沿うて走った。
前へ
次へ
全23ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング