いた。労働者が、緊張した態度で部署に縛りつけられていた。
吉田はその工場に対してのある策戦で、蒸暑い夜を転々として考え悩んでいた。
蚊帳の中には四つになる彼の長男が、腐った飯粒見たいに体中から汗を出して、時計の針のようにグルグル廻って、眠っていた。かますの乾物のように、痩せて固まった彼の母は、寝苦しいものと見えて、時々溜息をついていた。
(一体どうするのが、俺には一番いいのだろう)
彼は、暑さにジタバタする子供の寝顔を、薄暗い陰気な電燈の光に眺めた。
(一番いいのは、俺が首を吊ってしまうことだ!)(だが此年寄のおふくろは? 三人目の子供を産むために、下の児を連れて県病院の施療病室にいる女房は? 此二人の可愛いい男の子と、それから今度生れる赤ん坊とは? それはどうなるんだ? どうして生きて行くんだ? オイ!)
吉田は大きな溜息をついた。両方の手で拳を固く拵えて、彼の部厚な胸を殴った。
(だが、何とも為方はないさ。俺がよしんば死なないにした処で、――今度の事――で監獄に打ち込まれるとしたらどうだ! 死んだのと同じことになるじゃないか。いっそのこと……)
「おまい、寝られないのかい?
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