ある。
けれども兄弟よ。われ等は沢庵漬の諷刺から、人間へ帰らう。
兄弟よ。われ等も人間である。人間である以上良心を持つてゐる。われ等の良心は幸にして膏薬を張つてないから、センシブルである。だから、兄弟よ。われ等は「人類の理想」へ向つて進み得るのである。良心を、余りに淫逸に耽溺させ、アルコールに麻痺させた資本家共の瘡蓋《さうがい》だらけの良心には、「人類の理想」や「地上に於ける民衆の結合」や、「神の意志の体現」などは、到底分りつこはないのである。若しそれが彼等に分るならば、彼等は自己の存在が否定さるべきものである、と云ふことも分る筈である。
兄弟よ。地上に、「愛に依る民衆の結合」を齎さねばならぬ使命は、われ等労働者にのみ与へられたる特権であり、且は重い責任である。われ等は悪魔の誘惑にかゝつてはならぬ。どこまでもイワンの馬鹿で押通さねばならぬ。
四
「自分さへ良ければ他は蹂躪つても構はない」と云ふ考へは、他の其思想と衝突する。皆が他人を蹴倒して自分の利を追ふことになれば、多分皆の人が傷ついて倒れるであらう。又倒れつゝあるのである。
人類は「愛」に依つて美しい結合をしな
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