ムマー穴のだ!」
 小林は思った。音がパーンと鳴ったからだ。
 ド、ドワーン!
「相鳴りだ。ライナーだな」
 二人は、小屋の入口に達していた。
 ドドーン、ドドーン、ドーン、バラバラ、ドワーン
 小林の頭上に、丁度、彼自身の頭と同じ程の太さの、滅茶苦茶に角の多い尖った、岩片が墜ちて来た。
 小林は、秋山を放り出して、頭の鉢を抱えた。
 ドーン、バーン、ドドーンー
 発破は機関銃のように続いて、又は速射砲のようにチョット間を置いて、鳴り続けた。
 やがて、発破は鳴り止んだ。
 海抜二千尺、山峡を流るる川は、吹雪の唸りと声を合せて、泡を噛んでいた。
 物の音は、それ丈けであった。
 掘鑿の中は、雪の皮膚を蹴破って大地がその黒い、岩の大腸を露出していた。その上を、悼むように、吹雪の色と和して、ダイナマイトの煙が去りやらず、匍いまわっていた。が、やがて、小林と秋山とが倒れている川上の、捲上小屋の方へ、風に送られて流れて行った。が、上に上ると、それは吹雪と一緒になって飛んで行った。

 発破の後は、坑夫が一応見廻らねばならぬことになっていた。それは「腐る」(不発)のがあると、危険だからであった。
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