抛りだした。
秋山は運転を止めた。
「オイ、もう五尺は入っただろう」
ガラガラッとハンドルを廻しながら、六尺鑿を抜き出した。
小林は前へ廻って、鑿を外しながら、
「エッ」と云った。
「もう五尺は入っただろう」
「そうさなあ、入ったかも知れねえな」
「早仕舞にしようじゃないか」
「いいなあ、ハムマーの連中にそう云おうかなあ」
「だが、ダイの仕度は出来てるかい?」
「どうだか。見張りで聞いて来らあ」
「いや、構わねえ。お前、機械を片附けといて呉れよ。俺が仕度して来るから」
「そうかい」
秋山は見張りへ、小林は鑿を担いで鍛冶小屋へ、それぞれ捲上の線に添うて昇って行った。何しろ、兎に角火に当らないとやり切れないのであった。
ライナーの爆音が熄《や》むと、ハムマーの連中も運転を止めた。
秋山は陸面から八十尺の深さに掘り下げた、彼等自身の掘鑿を這い上りながら、腰に痛みを覚えた。が、その痛みは大して彼に気を揉ませはしなかった。何故ならば、それはいつでもある事だったから。
ダイの仕度は出来た。
二十三本の発破が、岩盤の底に詰められて、蕨のように導火線が、雪の中から曲った肩を突き出してい
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