磨滅《まめつ》して来た。いわゆる「焼けて」来たのであった。彼らは十分に栄養を採っているわけではなかったので、機械の油が切れてすぐ焼けて来るように、彼らの肉体も焼け始めたのであった。彼らは、ことに小倉は三上よりも体力が非常に劣っていたので、肩から背へかけた部分、大腿骨《だいたいこつ》の部分などに、熱を感じて来たのであった。それと共に、二人とも、非常な「だるさ」と、力の衰えることを感じた。彼らは「ままよ、なるようになれ!」と覚悟を決めてしまった。
 船長も、今は強圧的に、頭ごなしにやっつけるわけに行かなかった。もちろん[#筑摩版ではここに「彼は」が入る]、その精鋭なるピストルは本船に置いて来たのであった。このために彼は、幾分かその憶病さの度が募ったのでもあったが、何しろ、彼は、ただ一人であった。その権力――与えられたる――を保証し、それを暴力化せしめるところの背景が、全然、今、彼に与えられていなかったのだ。
 「力が一切を決定するのだ。民衆は、今恐ろしい勢いで力を得つつあるのだ。力が正しく働くか、力が悪く働くか、力が搾取的に働くか、力が共存的に働くか、によって、人類が幸福であるか、不幸であ
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