く鮮明にパッと明るく照らすように、この困難な労働の間に、感ずるところの彼らの地位は、全くハッキリした賃銀労働者の正体であった。しかし、それは電光と全く同じであった。彼らは、すぐ、その仕事の方へと一切の注意を向けねばならなかった。
水夫らは、船首の方を済まして、船尾のハッチへ行くために、サロンデッキに上《のぼ》った時であった。ブリッジにいたコーターマスターの小倉《おぐら》が、何かわからぬことを、からだじゅうで怒鳴りながら、物すごい勢いでブリッジから飛びおりて来て、サロンデッキを艫《とも》の方へかけて行って、そのタラップをまた飛びおりた。
セーラーたちは、ビクリとした。のみならず、コック場のコックやボーイや交替で休んでいた機関長や、ブリッジの上の船長やは、全部が小倉の飛んでった行方《ゆくえ》を見守った。
小倉は、船尾へ駆けつけた。そこには、ブリッジからあやつるスティームギーア(蒸気|舵機《だき》)の鎖と、そのカバーとの間に、わざとのように、水夫見習いが、右半身をうつ伏しにもぐり込ませていたのであった。
小倉は、水夫見習いが楽に出るようにと思ったのであったが、しかし舵機は同位に船首を
前へ
次へ
全346ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング