うな話をしたいと思うんだが、どれがほんとだか、どこからがこしらえたんだか、今では自分にもわからなくなってしまったんだ。ハハハハハ」と気のよさそうに笑った。
「君は全く、無産階級芸術家の宝玉だ。全くだよ」と藤原は、全くまじめにいった。
「小銃だと受けこたえができるが、藤原君がタンクを使用し始めると、僕も退却以外に応戦の法がねえや。ハッハハハハ」
西沢も、そのベッドへ上がって、ころがってしまった。
「どうだい、だれもかも皆寝ちゃったね。『寝るほど楽はなかりけり、浮世のばかが起きて働く』って歌があるじゃないか、皆賢くなっちゃったね」といいながら波田は、自分の巣から本を持ち出して来て、それを、罐詰《かんづめ》の蓋《ふた》のところへ行って読み始めた。
藤原はしばらく、暗い室の中で、煙草の火だけを、時々明るくさせては一人《ひとり》、何か考えているのであった。が、やがて彼は煙草を捨てて立ち上がった。
「波田君、君は感心に本を読むね、それは何て本だい。航海学かい」
「ナアニ、友人から借りて来たんだが、とてもむずかしくて、わからねえんだ」
「ちょっと見せたまえ、ヘヘー、マルクス全集、第一
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