え立たせた。
 「またどこかで、会うこともあるだろう。それまで、お互いに丈夫でいようよ、じゃ大切にしたまえ、さようなら」藤原は一握して立ち去った。
 「からだを大切にしてください。さようなら」とボーイ長はいって、その枕《まくら》に頭を埋《うず》めた。「さびしいなあ」彼は、止め度もなくあふれる涙の中へ顔をいつまでも埋めていた。
 「資本主義制度は、くもの巣みたいに、おれたちを引っくるんでいるんだ。どうあがいてもそれは気味悪くからみついて来るばかりだ、畜生! 今に見ていろ土ぐもめ!」藤原は考えながらデッキを大またに歩いた。
 サロンには、船長以下メーツらは、その装飾した上陸姿を並べていた。
 警察の巡査は後ろの方に立っていた。
 「フン、無意識的にブルジョアやその(以下十四字不明)、(以下十字不明)!」藤原はその情景を外からながめて感じた。
 波田は、全身の血が頭に逆流した。彼は、心臓でもえぐるように、船長の顔に燃えるような目を注いだ。
 船長は、しかし、今は充分に「因襲的尊厳」の鎧《よろい》を着て、旗、差し物沢山で控えていた。
 一同は、その各《おのおの》の、行李をサロンの出入り口へ投げ
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