のであった。
一方チーフメーツは投錨《とうびょう》と共に、通い船に乗って水上署へおもむいた。そして、そこで室蘭であった一部始終を話した。――彼はボーイ長のことは話すのを忘れた――それはきっと藤原の煽動《せんどう》だ。ことに波田はメスを抜いてわれわれを脅迫した。彼らはきっと暴行に訴えてもその実行を迫るだろうから、本船へ出張の上保護を加えてもらいたいと願い出た。
水上署のランチは、チーフメーツと共に、屈強なる巡査五、六名を載せて、威勢よく出動した。
ランチは万寿丸のタラップについた。チーフメーツは警官たちをサロンに案内した。そこで、巡査諸君は、りんごと、菓子と、コーヒーとの「前で」しばらく待たなければならなかった。
水夫たちは、ウインチに油をさしたり、種々な道具類を片づけたりしていた。そして彼らは、「その夜は、明日《あす》の朝まで、つまり正月の朝まで帰らないでいい上陸ができる」と考えて、愉快な気持ちになって働いていた。確かに、彼らは、当分、船に帰らないでもいい上陸によって、待ち受けられていたのだ。
船長は、今は、前航海の、夜中におけるサンパンの中の船長でも、出船前の室蘭における彼
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