れよりは、はるかにいい待遇が与えられていますよ。その監獄よりひどいのが、万寿丸で、その船長が吉長武《よしながたけし》といわれては、あなたの名誉でもなかろうと考えます」
藤原は、また思い切ってやったものだ!
船長及び士官らの、憤慨ぶりは頂点に達していた。彼らは、椅子のクッションのように赤くなったり、海のように青くなったりした。彼らの憤慨と同じ比例で、水夫らは喜んだ。
「全くだ!」とうとう波田が怒鳴ってしまった。
「そうだ!」波田の気合のかかった言葉につり込まれた、扉《とびら》の外の火夫たちは、一斉に喊声《かんせい》をあげた。
「第一、私たちは、肉体を売る資本家かもしれない! だが、要するに、私たちは生きているんです。おまけにまだこの上も、生きて行きたいと思っているんだ。生きて行きたくなけや、こんな船になんぞだれが乗るもんか、畜生!」波田は、まだまだ言わなければならないことが、山のようにあった。あまり言うことが多くて、彼の言葉がスラスラと出なかったために、畜生! で爆発してしまった。
「だれが畜生だ! 失敬な」船長は、夢中になって立ち上がった。
扉口《とぐち》の外からは、罵声
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