彼らは、陸上に一軒を経営しているのだ! 彼らは、どんなことがあったって、十三円や十八円で、一家の生活を保とうとして船に乗る気づかいはなかった。ストライクブレーカーはおあいにくであった。「そのくらいのことは、おれたちだって気をつけてるよ」と藤原は言ってやりたかった。波田はもうムズムズしていた。
ボースンは驚いた。その職業と、月二割の利子――もっともうち、一割はチーフメーツ(実は船長かもしれない)が、上前をはねるんだが――とが、フイになるのである。しかも、彼は、何をしたんだ! ただ、忠実な番犬だったのみではなかったか。彼は、功労こそあれ何の過失があったか、すでに、彼は、いったんの危急をチーフメーツのために、救助さえしたではないか。
「しかし、これは船長に何かの深い考えがあることだろう。一度、皆の前でそう言って、ボースンは代わりがいない――と言うようなことにするつもりなんだろう。でなきゃ、船長だっておれの首を切れた義理じゃなかろう、おれがいなけゃ、あの妾《めかけ》だってあんな具合に、お安く手に入らなかったに違いないんだから」
哀れなボースン、彼は憶病犬みたいに、半信半疑で、主人の心を
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