「やつは、高圧的に出るつもりだな」藤原は思った。波田、小倉、西沢、各《おのおの》は、別様の戦闘意志を持っていた。
ボースン、大工も青くなって来た。
この時、ファヤマンの方でも小倉が、持って行って見せた要求条件が、問題になって、主戦論と非戦論との猛烈な論戦が行なわれていた。だが、全体として階級闘争ということは、ハッキリ頭にはいっていなかった。従って、それは適当ではある、けれども、まだ直接の刺激、衝動が来ない、というような「感じ」が、彼らを、水夫らと共に立たせることを妨げた。しかし、彼らは、立たないにしても動揺はしていた。それは、立つまいものでもない気配に見えた。
彼らの出入り口の前を水夫らが通る時に、彼らは、喊声《かんせい》をあげた。
それは、サロンまで響き渡った。
これらのことは、万寿丸ができて、海に泛《うか》んでから初めてのことであった。
水夫たちは、笑《え》みを浮かべて、火夫たちに挨拶《あいさつ》しながら通った。それは、まるで、目をさました獅子《しし》の第一声のようでもあった。
何となく、いつもと違っていた。スタンバイがかかったのに、船体はピク[#「ピク」は筑摩版で
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