仕事の命令を発しようとすると、ストキはすぐに、チーフメートの机の上に、その要求条件を載せた。
「水夫一同は、その要求書どおり要求しますから、要求を容《い》れてください。そしてその要求書に判をおしてください。つまりそれが要求承認の意味になるのです」
 ボースンはそこへ凍りついた棒のように立っていた。
 チーフメーツは、暗礁《あんしょう》に乗り上げたよりももっともっと驚いた。
 それはありうることではなかった。暗礁はありうるが、水夫らが要求書を出すなんてことが! 彼は憤《おこ》ってしまった。
 「何だ、要求だ! どんな要求だ! 乗船停止の要求か!」チーフメーツは怒鳴った。
 ボースンは縮み上がった。彼は、私は知りませんと言いたかったが、――そこにストキが立っているではないか――ああ、困った。彼は字義どおり立ち往生した。
 ストキは平気だった、「初めやがった」と彼は思っていた。
 「そこに書かれてある通りの要求です。ご質問があればお答えいたします」
 ストキは「癪《しゃく》にさわる」ほど落ちついていた。
 「どんな要求でも今はいけない。横浜へ帰ってからだ!」チーフメーツは、事態が自分の考えて
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