野郎だ」と思いながら、波田は、シチャードへ、ミルク一罐と、卵十個分けてもらえないかと交渉した。
「ボーイ長にやるんだって、ああ、いいとも、持って行きな、そうかい、じゃあパンを一斤ばかり持ってって、牛乳と卵とで湿してやるといいや、ほら、ここに砂糖と、……それだけでいいかい、そしてどうだね、ボーイ長の容態は」シチャードは親切に倉庫から、それらのものを笊《ざる》へ出してくれた。
「どうもありがとう。金はあとでおもてから払うからね、当分済まないが借しててくれないか」波田は全くうれしかった。
「いいよ、そんなこたあ、気をつけてやりな、若いもんだ。先のあるもんだからな」
「ああ、そいじゃ、ありがとうよ」
波田は、ともかくそれらのものを持って来て、ボーイ長に与えた。
彼は飢えた狼《おおかみ》のようにむさぼり飲んだ。ボーイ長が食欲を失っていないことが、波田には大層心強く思われた。
彼が安井のために、食事のしたくをする間にだれもが食事を終わっていた。そして、茶碗《ちゃわん》や、徳利(醤油《しょうゆ》)はころばないように、各《おのおの》その始末さるべきところへとしまわれてあった。彼は、それか
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