に燃える真理が、炬火《たいまつ》のごとくに、輝《ひか》っているのだ。――
藤原は、勘定を払った。「済まないなあ、僕が、おれいにおごるつもりだったのに」とボーイ長は、藤原に負《おぶ》さりながら、真から恐縮して言った。
ボーイ長のまっ白の繃帯《ほうたい》は、それでも血がにじんで来た。「膿《うみ》が出るよりはいいね」と、ボーイ長は笑う元気が出た。
しかし、本船に帰り着いた時は、彼らは、グッタリくたびれていた。ボーイ長は、そのひきずった足のために、再びその神経は、かき荒らされてしまった。それは、美しい夢から目ざめた、牢獄《ろうごく》内の囚人の心に似ていた。
一切は、また狭い、低い、騒々しい、不潔な、暗い、船室の生活へ帰った!
三八
万寿丸は、横浜へ帰ると、そのまま正月になるのであった。従って、船体は化粧をしなければならなかった。船側は、すでに塗られた。次はマストが、塗られねばならない。
マストのシャボンふき、ペン塗り、――この仕事は、夏はよかったが、正月の準備などは、冬に決まっていたので、困難であった。シャボン水は凍ってヨーグルト見たいになるし、ブラシが凍るし、全く、
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