僕の故郷では、どんなに嘆くか知れやしないよ。それだけではないんだ。僕の家では食う物に困ってしまうんだ!」小倉は感情がたかぶって来た。彼の頭には、彼が村を去る時の悲痛な光景が涙に曇って浮かんで来るのであった。
 「同情する! 労働者はほとんどすべてが、罷工《ひこう》することのできない地位につき落とされているんだ! あらゆる組織がおれたちを簀巻《すま》きにしているんだ。そして、おれたちは首を切られても罷工もできないんだ。直立不動の姿勢を保って、なぐっても、けられても、それをくずせない新兵よりもおれたちは苦しいのだ。資本制は、労働者に一人《ひとり》残らず狭窄衣《きょうさくい》――監獄で狂暴な囚人に着せる革《かわ》の衣類、それを着ると、からだは自由がきかなくなって、非常な苦痛を感じる――を着せて、手錠、足錠をはめているのだ」藤原は、その目だけがますます然え上がった。が顔はそれと反対にだんだん血の気があせて青ざめて行った。
 「だが、小倉君、君はどっちにしてもだれかの死には、関係しないわけには行かないだろう、ボーイ長は、自分のパンを求めに来て、鉤《はり》のついた餌《えさ》を食った魚のように、自分
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