そしてこれは、社会の一切の根本は、労働者の労働によって、維持される、ということを語るものだ。きわめて簡単であるのに、われわれの知らされない、唯一の事実なんだ!
 水夫たちはそんなふうに感じて、煙草《たばこ》に火をつけた。
 藤原は、西沢と波田とに、「これはまだ何でもないんだ。僕らは、こんな詰まらない理由でストライクには移れない。これは、労働者の発作的の痙攣《けいれん》だ。ストライクは発作的に無計画に起これば、必ず失敗するものだ。しかし、これでも、事によるとほんとうのストライクの、口火にはなるかもしれないけれどね。ストライクの総成員三名なんてのは、古今未聞だろうね」
 「僕らは、しかし、この船の船長や、チーフや、ボースンには、あらゆる機会に反抗しなきゃならないんだぜ。船長チーフメーツは共謀で、おれたちあての食費を、会社から前月末に受け取るものだから、それをボースンに月二割で、おもての者に貸しつけさせてるんだぜ。見ろ、だから借金しないと、給料も上がらないし、受けが悪いじゃないか。向こう半年も頭なしのやつはどんどん給料が上がるじゃないか。やつらは、借金の利子を回収するためだけで、給料を上げ
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