デッキを歩いてると、船が急に傾いたんで、左の足をウンと踏んばったんだよ。それがねちょうど都合悪くデッキが凍ってたもんだからすべって、つい鎖の方まではいってしまったんだよ。その時に舵機ががらがらと動いたもんだから、私ゃ鎖に食い込まれてしまって、カバーの中へからだを半分入れたらしいんだよ。そしてうつむけに引きずられたもんだから、胸をひどくデッキへたたきつけたらしいんだよ。わしは、ボーッとして気を失ってたから、足を食い込まれて、ひどくやられたことだけは知っていたんだけれど、こんなに胸や手やなどが痛むとは、助けられてからでも思わなかったんだよ。だけど、足はもうすっかりなおっても、ビッコを引かなけれや歩けないだろうと思うと、どうしていいかわからなくなるよ。おらあ、からだよりほかにもとでがねえからなあ、びっこをひくようになっちゃ、車も曳《ひ》けないからねえ、そうかって学問をする学資はないしね、家にゃまだ子供が八人もいて、小作のおやじはおふくろと一緒に、それこそまっ黒になって働いても、どうしてもやって行けねえで、小さな子まで子守奉公《こもりぼうこう》に出してあるんだよ。だからおれ、少しでもかせいで家
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