亡への階段ってのよ。わかって。それをうまくのぼっても、その階段自身が滅亡する運命になってるし、それがまたある間は、その階段をささえる土台の方で、無数の人間が失われる滅亡の階段ってのよ。その階段てのが、一切の原《もと》なのよ。ね小倉さん。実は、ありもしない幻の階段のために、実在してる人間が、永劫《えいごう》に苦しむってことはいいことなの。あんたにはわかるはずだわ。あんたは、その階段からまるでその焼けつくような目を放したことがないんだもの。それは、あんたにはわからねばならないんだわ。あんたは、私や、その他ありとあらゆる不幸な、あんた自身も、その不幸者の第一人よ。よくって、その沢山の不幸な人間をもっと、もっとモやすために、あんたは、大骨折りで勉強して、そしてひとかど善人ぶってるのよ。ホホホホホホ、とうとう、私、あんたを、大ばか者にしてしまったわね。ご免なさいね。だけど、それはほんとに、あなたは大ばかなのよ。ホホホホホホ」女は全速力の船の、スクルーシャフトが回転してるようだった。
「ああ、それはほんとの事だ!」と、小倉は口走った。
「僕は、社会の、秩序という大きな看板に隠れて、自分の利欲の
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