そうでしょう。そうよ、そうよ、私にはね、あなたが自分で知らないことまでわかるんだわ。だから、まあ聞いてらっしゃい。だけどね、小倉さん。あなたは、それだけじゃ三上さんよりも、まだだめな、役に立たない穀《ごく》つぶしよ! わかって。世の中にはね、この汚れた世の中をすこしもよくしようとしないで、ますます悪く、腐らせて行くためにだけ努力していて、それでいて自分は点の打ちどころのない善良な人間だと思ってる人が沢山あるのよ。帽子をキチンとかぶって、几帳面《きちょうめん》な、ガキガキと歩いて、一銭も人から借り倒さないで、乞食《こじき》には、きっと一銭――一銭より少なくも多くもないことよ――それっぱかしだけやって、女といえば、おかみさんだけしか知らないで、それも、まるで家の雑巾《ぞうきん》と同様に無趣味に乾《かわ》かし上げて、ね、若いうちから、決して女郎買いなどしないで、その代わり、小倉さんは航海学を読んでるでしょう。そして、高等海員の免状を受けようともくろんでるわね。勉強してることね。あんたは。ね、いいの、あんた見たいに、勉強して、そして、階段を上がろうとして骨を折るのよ。だけどね、その階段はね、滅
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