がいけないって、あなたも考えて? 私たちだって、何かを見分ける力を持つことが、悪いってことはないでしょうね、よし悪くっても、それはあるものなんだわ、だから私たちは、心から人を愛するということはできないのよ。だけどもね、それは私たちの愛するだけの『価値』のある男が、この世の中にないってことじゃないのよ。そういう人もあるのよ。ええ、そういう人もあるのよ。そしてね、随分|癪《しゃく》にさわることはね、それは全く腹の立つ、癪にさわる生意気なことなのよ。そういう男はね、私たちが、ほんとにしんみりして、その人と愛し合いたいと思うような、そういう人はね、いつでもきっときまり切ってばかなのよ。ばかでのろまで、ぼうっとしてるの。でそういう男はね、私たちが、その男を愛してるってことがわからないのよ。そしてまた、その男は随分ばかね。私たち見たいな女は、男性を愛することは職業的以外にできないとでもいったように、無関心なのよ。全く、ばかにつける薬ってものは昔から、どこにもなかったのね」
彼女は、まるで夢遊病者か何かのように、天井を向いたっきり、その大きく開いた目を、自分の頭蓋骨《ずがいこつ》の内部でも凝視して
前へ
次へ
全346ページ中127ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング