遠慮がちにすわりながら、
「ねえ、あの方、三上さんてえの、あなたが小倉さん、ね、小倉さん、三上さんはね、あなたを巻き添えにして済まないけれどね、とても今夜は帰れないんですって、明日《あす》になったって、どうだかわからないんだなんていっててよ。そして、済まないがとにかく明日の朝まで待ってくれるようにっていって、そのまま寝てしまいなすったわ」
「ああ、いいよ。それじゃ僕も泊まらせてもらおうか。ねえさん。僕はね、ねえさんがきらいでなんぞないんだよ。抱きしめて、キッスしたいくらいだよ。だけど、僕にはね、僕が愛してると同じように僕を愛してる人があるんだよ。だから、僕は一人で寝るから、ねえさんは、帳場の具合が悪かったら、床を二つ敷いて、並んで寝ようね。そして寝物語に、ねえさんのほんとの恋人の話でも聞こうよ」といって、さびしく気の毒そうに小倉は笑った。
「まあ!」と立って床を延べようとしていた女は、急に小倉の膝《ひざ》の上につっ伏《ぷ》した。そして泣き入るのだった。小倉はびっくりした。
「どうしたの。一体、え、そんなに帳場に都合が悪けりゃ一緒だって、ちっともかまわないから、泣くのはおよしよ。
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