彼は、西沢が女郎に愛されたという話を聞くと、きっと、彼はその女の名前をきき出して、次航海には、ソーッと一人《ひとり》で、「愛」とはどんなものかを探りに行くのであった。三上のこの心の秘密は、だれも知らなかった。であるから、彼は変態性欲者と、その真実の「愛」を求める原始的巡礼の状態を名づけられたのであった。で、彼は自分が、他にとって、決して真摯《しんし》な愛に相当しないことをさとって、自らもジョーカーとなったのである。
 三上は小倉を盗み見しては飲み、かつ、その年増《としま》の女を捕えて悪ふざけしていた。が、小倉は黙って食っていた。小倉の相手の女はとりつき端《は》がなくて、困っていた。三上が便所に立って、相手の女も続いて案内に立ったあとで、小倉のそばにいた若い女は、「どうしてあんたはそんなに黙ってるの、何かおもしろくないことがあって? も一人の人はあんなにはしゃいでるじゃないの、それとも、もうあんたは眠いの?」とその膝《ひざ》にもたれながら小倉にきいた。
 「あの男はね、かわいそうな男なんだよ。あの男の事を僕は心配してるんだ」と小倉は答えた。
 「どうして、あの人がかわいそうなの。私ならあ
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