ら五人づゝの選手が出て、一メートルづゝ縄を綯つて、一定の長さに達した時、石を載せた箱を引つ張つて張力を試験して見た。これは殆んど同時に綯ひ上つた組が多く、石が軽かつたために、切れた縄もなかつた。が、まるで縄になつてゐないで、さゝくれ立つてゐて、おそる/\石を引つ張つて賞に入つた、といふので「縄の規格」の審査をやれ、といふ声が上つた。
何しろ、優勝区には、増産奨励の酒が一升づつ出ることになつて村長の机の上に六本並んでゐるのだから、他の賞品になら寛容の美徳を現はす連中も、この縄綯ひリレーだけは、勝敗が明確でないといふことにした。
爆笑に続く哄笑。晩秋の陽光は澄みきつた高山性の空気を透して暑く、一同を汗ばませた。
運動会の終了後は、賞と書いた胴巻きのある酒瓶を中心に、各区の集会所で一同持ち寄りの懇親会が開かれた。ここでまた、運動会の話で持ちきつた。
かうして、一日楽しく明治節を祝つた。
明日からまた稲扱きに寸暇もない。そして直ぐに麦蒔きである。
かうして農民は、全力を上げて増産にいそしんで、子供と一緒に娯しんでゐるのである。
底本:「日本の名随筆19 秋」作品社
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