んである二坪ばかりの空地から、三本の坑道のような路地が走っていた。
一本は真正面に、今一本は真左へ、どちらも表通りと裏通りとの関係の、裏路の役目を勤めているのであったが、今一つの道は、真右へ五間ばかり走って、それから四十五度の角度で、どこの表通りにも関《かかわ》りのない、金庫のような感じのする建物へ、こっそりと壁にくっついた蝙蝠《こうもり》のように、斜《ななめ》に密着していた。これが昼間見たのだったら何の不思議もなくて倉庫につけられた非常階段だと思えるだろうし、又それほどにまで気を止めないんだろうが、何しろ、私は胸へピッタリ、メスの腹でも当てられたような戦慄《せんりつ》を感じた。
私は予感があった。この歪《ゆが》んだ階段を昇ると、倉庫の中へ入る。入ったが最後どうしても出られないような装置になっていて、そして、そこは、支那を本場とする六神丸の製造工場になっている。てっきり私は六神丸の原料としてそこで生《い》き胆《ぎも》を取られるんだ。
私はどこからか、その建物へ動力線が引き込まれてはいないかと、上を眺めた。多分死なない程度の電流をかけて置いて、ピクピクしてる生《い》き胆《ぎも》を取
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