つば》を吐いて、そのまま階段を下りて門を出た。
私の足が一足門の外へ出て、一足が内側に残っている時に私の肩を叩いたものがあった。私は飛び上った。
「ビックリしなくてもいいよ。俺だよ。どうだったい。面白かったかい。楽しめたかい」そこには蛞蝓《なめくじ》が立っていた。
「あの女がお前のために、ああなったんだったら、手前等は半死になるんだったんだ」
私は熱くなってこう答えた。
「じゃあ何かい。あの女が誰のためにあんな目にあったのか知りたいのかい。知りたきゃ教えてやってもいいよ。そりゃ金持ちと云う奴さ。分ったかい」
蛞蝓《なめくじ》はそう云って憐《あわ》れむような眼で私を見た。
「どうだい。も一度行かないか」
「今行ったが開かなかったのさ」
「そうだろう、俺が閂《かんぬき》を下《おろ》したからな」
「お前が! そしてお前はどこから出て来たんだ」
私は驚いた。あの室には出入口は外には無い筈《はず》だった。
「驚くことはないさ。お前の下りた階段をお前の一つ後から一足ずつ降りて来たまでの話さ」
此|蛞蝓野郎《なめくじやろう》、又何か計画してやがるわい。と私は考えた。幽霊じゃあるまいし、私の
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