んじゃないんだが、それにしてもこんな事は明《あきらか》に必要以上のことだ。
――こいつ等は一体いつまでこんなことを続けるんだろう――と私は思った。
私はいくらか自省する余裕が出来て来た。すると非常に熱さを感じ始めた。吐く息が、そのまま固まりになってすぐ次の息に吸い込まれるような、胸の悪い蒸《む》し暑さであった。嘔吐物《おうとぶつ》の臭気と、癌腫《がんしゅ》らしい分泌物《ぶんぴぶつ》との臭気は相変らず鼻を衝《つ》いた。体がいやにだるくて堪えられなかった。私は今までの異常な出来事に心を使いすぎたのだろう。何だか口をきくのも、此上何やかを見聞きするのも憶却《おっくう》になって来た。どこにでも横になってグッスリ眠りたくなった。
「どれ、兎《と》に角《かく》、帰ることにしようか、オイ、俺はもう帰るぜ」
私は、いつの間にか女の足下の方へ腰を、下していたことを忌々《いまいま》しく感じながら、立ち上った。
「おめえたちゃ、皆、ここに一緒に棲《す》んでいるのかい」
私は半分扉の外に出ながら振りかえって訊《き》いた。
「そうよ。ここがおいらの根城なんだからな」男が、ブッキラ棒に答えた。
私はその
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