へ嵌《はま》りました。
仲間の人たちは、助け出そうとしましたけれど、水の中へ溺《おぼ》れるように、石の下へ私の恋人は沈んで行きました。そして、石と恋人の体とは砕け合って、赤い細い石になって、ベルトの上へ落ちました。ベルトは粉砕筒《ふんさいとう》へ入って行きました。そこで鋼鉄の弾丸と一緒になって、細《こまか》く細く、はげしい音に呪《のろい》の声を叫びながら、砕かれました。そうして焼かれて、立派にセメントとなりました。
骨も、肉も、魂も、粉々になりました。私の恋人の一切はセメントになってしまいました。残ったものはこの仕事着のボロ許《ばか》りです。私は恋人を入れる袋を縫っています。
私の恋人はセメントになりました。私はその次の日、この手紙を書いて此樽の中へ、そうと仕舞い込みました。
あなたは労働者ですか、あなたが労働者だったら、私を可哀相《かわいそう》だと思って、お返事下さい。
此樽の中のセメントは何に使われましたでしょうか、私はそれが知りとう御座います。
私の恋人は幾樽のセメントになったでしょうか、そしてどんなに方々へ使われるのでしょうか。あなたは左官屋さんですか、それとも建築
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